「ニーズ」ではなく
「ウォンツ」をつくるDESIGN PARTNER 03
アートセンター画楽/高知

アートセンター画楽のご紹介

高知市内の施設「画楽」。ここでは、障害のある人々が、自らの個性や特性、技術を生かし仕事に結びつける「おしごと画楽」と、それぞれの制作活動を行う「アートセンター画楽」を軸に活動しています。穏やかでのびのびとした雰囲気の画楽で、どのような人々が、どのような考えのもと活動しているのか、取材しました。

高知市内の施設「画楽」

なぜ仕事をするの?

なぜ仕事するのか? 生活のため、家族のため、それとも……? 代表の上田祐嗣さんが導き出した答えは「喜びのため」。老いも若きも、障害のある人もない人も、仕事でお金を得て好きなものを買ったり、仕事を通して誰かに喜んでもらったり、生きがいを得たりすることが、人生を豊かにしていくのだと話します。画楽に通う人々も、高いクオリティの商品制作・販売や作品制作・販売を通し、社会とのつながりを得て、自らの可能性や選択肢を広げています。

「喜びのため」と語る上田祐嗣さん

画楽で制作・販売しているものの特徴のひとつは、「必要なもの」ではなく、「欲しいと思えるもの」に特化していること。「必需品の製造・販売を仕事にしようと思ったら、安く高品質なものを売る100均ショップやコンビニには勝てない。だから、それは目指さずに、思わず手にとってみたくなるような“揺らぎ”の中にある“欲しい”気持ちに沿うものをつくり、販売しているんです」。ちょっと人間臭く妙に味わい深さに惹かれるもの、手元にあるだけでホッとしたり、うれしくなったり、心に余裕が生まれたりするもの。画楽で生み出されるのは、そんな商品です。

画楽の人気商品、「おみくじダルマ」

画楽の人気商品、「おみくじダルマ」を例に説明してくださいました。ガチャガチャに詰められたおみくじダルマは、1回100円の手軽さに可愛らしさもあいまって、欲しいダルマが出るまで粘るファンがいるほど。さらに、坂本龍馬などのご当地ものをダルマのキャラクターとして、おみくじより少し高くして売り出しました。定番商品プラスαのものを企画し売り出すことで、“欲しいもの”を少しずつ増やし、新たなファンを生み出しています。「最終的には画楽に通うみんなの工賃アップにもつながれば、嬉しいですね」。

画楽の人気商品、「おみくじダルマ」

人と関わると、変わる

「おみくじダルマ」には、まだまだ秘密があります。驚いたのは、そのクオリティの高さとプロ意識。制作から検品、完成に至るまではもちろん、雑貨店など市内約8ヶ所で委託販売されているおみくじの詰め替えや料金回収も、メンバーが行っています。売り上げ回収と詰め替えを担当しているのは、金子仁麗さん。月1回の回収作業は、お店の人々と会話する時間でもあり、とても楽しい時間だと話します。

雑貨店など市内約8ヶ所で委託販売されているおみくじの詰め替えや料金回収をするメンバー

画楽に通い始めた当初は、嫌なことを嫌だと言葉にして伝えることが難しく、独り言のように呟くことが多かったそうですが、一連の仕事を通し、「感情を言葉にして伝え、会話する」ことができるようになってきました。「自分たちのつくったものがどうやって売られていて、どんな反応があるのかわかると、感情を上手く言葉にできなかった人でも、段々と意思表示をしてくれるようになったりして、人との関わり方も変わってくるんです」と、スタッフの中林かおりさん。

ダルマの製作工程には、スタッフの皆さんの工夫が光ります

ダルマの製作工程には、スタッフの皆さんの工夫が光ります。色付けのための設置台など、作業をしやすくするための道具作りも欠かせません。ダルマの芯にしているのは、造花の芯。その中に重石を入れるため穴あけの位置を示すためのマーキング、穴あけ、重石入れ、色付けの土台となる紙貼り、色付けをスムーズにするためのやすりがけなどなど、工程をできる限り細分化。その上で、一人ひとりの性格や障害に合わせ、各自が得意とする工程を担当しています。あと一歩でできるようになりそうなことを見つけたり、働く環境を整えたりすることがスタッフの仕事だと考えているそう。主体はあくまでもメンバーで、スタッフはメンバーがより才能を発揮し、生き生きと仕事するためのマネジメントを担っています。

商品になるのってうれしい!!

高知市の隣町、土佐市では、画楽のメンバー・安藤重美子さんがイラストを担当した商品が作られています。そのひとつが「Tomato Dolce 寒天ジェリー」です。高知は全国でも有数のトマト生産地。その魅力をより広く知ってもらおうと開発された商品に、果肉まで緻密に描かれたカラフルなトマトのイラストが使われています。安藤さんは実際にトマト農家を訪れ、カラフルなトマトが育つ様子も見学しました。

安藤重美子さんがイラストを担当した「Tomato Dolce 寒天ジェリー」

安藤さんは、画楽に通う以前は、20年ほど精神病院に入院していました。今でこそ穏やかな雰囲気で作業や制作にいそしんでいますが、苦しい経験も多く、青春時代を謳歌できなかった辛さや、思うように一歩を踏み出せない生きづらさを抱えてきたそうです。「当初はメンバーの絵が何かのパッケージに選ばれたりすると、羨ましさや葛藤もあってか、安藤さんの描く絵もそれに似せて『自分も描ける』とアピールするような傾向がありました。

でも理想は、安藤さんが本当に描きたいものを描くこと。図鑑などを参考に色々と描いてもらうことで、何が好きなのか、徐々に様子を見ていくことにしたんです」と中林さん。実物を見て描くことに絵心を発揮した安藤さんはその後、画楽を応援するデザイナーから依頼された「トマトジュレ」パッケージイラストの選考に応募。「商品化されたことがうれしくて、家族や友達にもプレゼントしました」と安藤さん。中林さんから見ても「過去に受けた傷が完全に消え去ることはないけれど、少しずつ自信がついて、穏やかな気持ちで過ごせるようになったように見えます」。

好きなことが仕事に結びつき、やりがいを得る

好きなことが仕事に結びつき、やりがいを得るということ。仕事を通し誰かに喜んでもらうこと。可能性や選択肢を増やし、選びとっていくこと。画楽での取材中、これらは、生きていく上で誰もが必要とすることなのだと感じる瞬間がありました。代表の上田さんは、福祉の仕事に、新たな仕事のスタイルを見ています。「自動車生産など多くの仕事がAIや産業技術ロボットなどに取って代わられる未来が語られている現在、『揺らぎの中にある、ちょっと欲しくなるもの』をつくり生活するスタイルは、今後、人として豊かであるとはどういうことかを考えるヒントがあるのではないでしょうか」。

〈まなび〉障害者福祉施設での仕事のスタイルは、
これからの仕事のありかたも示唆しているのかも!

障害者地域活動支援センター
アートセンター画楽

画楽は高知市のおへそ、まちの真ん中はりまや橋の近くにあります。それは、できるだけメンバーたちが自分の力で交通機関を使って通ってこられるようにするためです。画楽では開所以来16年彼らの「できた!!」という喜びを原動力に、それぞれの成長に合わせて少しづつ変化し続けています。最近、だるまの製造工房とTシャツ工房、アートグッズのショールームを兼ねたfab画楽を近くに開設しました。お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。

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